9月24日に行われた奈良県議会本会議一般質問における、山村幸穂県会議員の奈良教育大附小問題に関する質問と回答をテキスト化しましたので、公開いたします。
県議会録画は、以下よりご覧になれます。
(山村議員)最後に奈良教育大学付属小学校への不当な介入について伺います。奈良教育大附属小学校は、60年間にわたり、みんなの願いで作る学校を掲げて、子どもの発達を信じて徹底的に待つことを学校づくりの原則に、子どもの個性や発達過程を大切にして教育課程を作ってきました。保護者からは、授業は内容を詰め込むのではなく、子どもの気持ちを大事に噛み砕いて進めてくれると喜ばれています。ところが、今年4月に人事交流で奈良県教育委員会から校長が着任すぐに、授業内容の一部が学習指導要領に対して不適切だと問題にし、県教育長に相談、県教育長から5月30日、6月7日に、付属小学校に道徳科の指導計画、教科書の無償給与と採択などについて調査すると公文書が送られました。後に口頭で撤回が伝えられたそうですが、所管外の学校へ県教委が調査をする権限はありません。
その後奈良教育大学が調査を行うことになり、不徹底、不適切法令違反などと決めつける報告が出され、さらに正規教員19名全員を対象に出向させる方針が出されました。これについては政府、文部科学省から圧力的な介入があったことを大学の副学長が認めております。日本の教育全体にとっての重大問題です。このことは国会の文部科学委員会で追及されました。教育実践について、不適切、学習指導要領違反などを報告されましたが、実際には指導要領を参考にした創意工夫が行われていたのです。そもそも学習指導要領に絶対の法的拘束力があるわけではなく、最高裁判決でも教員の創意工夫を認めています。今年3月13日の衆議院の文部科学委員会で、文科省も非常にモデル的で良い教育が行われていると答弁しています。当事者である子ども不在で教育内容が不適切と決めつけることは、子どもたちが学んだことを否定し、傷つけるものです。今年の卒業式では、卒業した6年生が1年から5年生の後輩に、「この学校で学んだことに自信を持ってください。僕たちはこんなに成長できました。この学校の教育は決して間違っていません。」とエールを送ったそうです。子どもたちが校長に先生たちを追い出すのはやめてと訴えてもいます。付属小学校では今年3月末で教職員約50人のうち26人が離任。10年以上のベテラン教員5名が懲罰的に本人の同意なく強制出向配転となったのです。これまで付小の教育に尽くしてきた、教師の尊厳を傷つけるもので、許されません。児童や保護者からは驚きの声があがりこれまで大切にしてきた通級指導教育ができなくなるなど、ベテラン教師の出向は大きな混乱をもたらしています。本人の同意もなく3月中旬になっても出向先の労働条件の整備もできていないにもかかわらず強行されたことに、3人の教師が不当な強制出向は無効であるとの確認訴訟を起こしています。
このような一連の教育の自由、自主性を奪う政府、文科省、県教委、大学当局らの介入に対して、全国の500人を超える教育研究者らが緊急声明を発表。全国の学校教師たちも安心して教育課程編成に取り組むことができ、子どもたちのために学校づくりができるよう、国立大学法人の運営及び地方教育行政を所掌する関係者に冷静な議論、判断を求めますと述べています。また、多くの県民が参加する奈良教育大付属小学校を守る会が結成され、付小の教育を守り、子どもたち、保護者、教師を支える活動をしています。
そこで教育長に伺います。奈良県教育委員会が権限のない奈良教育大学付属小学校に対し、教育実践に関する調査の公文書を出したことが一連の乖離を招き、現場の混乱の大きな要因となったといえますが、どのような理由で調査が必要と決定し公文書を出すこととなったのか、また再発させないための取り組みについて伺います。
また、奈良県教育委員会は奈良教育大学と人事交流を行っていますが、今回のように本人同意もなく労働条件も整備されない中での強制出向は中止するよう大学側に求めるとともに、来年度以降の出向人事は中止するよう求めますが、いかがでしょうか。以上壇上での質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
・・・中略・・・
(大石教育長)文書発出の理由等と人事交流についてのご質問でございます。奈良教育大学付属小学校に対しましては、教科用図書の無償給与及び教科用図書の採択に関して疑義が生じるようないくつかの情報があったということ、県教育委員会ではそれを確認するため予備調査が必要であると考え、義務教育小学校、教科用図書の無償措置に関する法律に基づき、令和5年6月7日付で教育長名による通知を発出したということでございます。
また奈良教育大学附属小学校との人事交流でございますけれどもこれは、国立大学法人奈良国立大学機構、奈良教育大学と奈良県教育委員会との連携協力に関する協定書および教職員の相互の人事交流に関する覚書に基づき、教職員の資質向上を図ることや教育研究の充実発展に寄与することを目的として行っているものでございます。奈良教育大学附属小学校の教員の出向につきましては、奈良教育大学の人事でありまして、県教育委員会が判断できるものではないと考えております。また、来年度以降の人事交流につきましては、今年度の人事交流の効果について検証するとともに、奈良教育大学附属小学校から出向している教員と奈良国立大学機構との間の訴訟の状況を注視し検討をしてまいりたい、と、このように考えております。以上でございます。ご質問ありがとうございました。
・・・中略・・・
(山村議員)次に教育長に伺いたいと思います付小について、この教科書の問題なんだから合法的だというふうにおっしゃったようなんですけれども、でもこの調査は撤回されていますよね。なぜ撤回しているんでしょうか。
(大石教育長)最初に出たものは、先ほど申し上げたような形で提出を通知をさせていただいているということでございます。ただ調査、これは調査で予備調査というレベルでございますけれども、それに関しましては大学法人の方で行うというようなそういう回答があったのでそれは下げたという、そういうことでございます。
(山村議員)所管が違う教育大付属小学校に対して県教委は調査をする権限というのはないですよね。
(大石教育長)先ほども申し上げましたけども、調査ではなくて予備調査というような内容のものを号外という文書で出させていただいているというところでございます。
(山村議員)号外か知れませんけれども、公文書であります。そういうものを県教委が出されたということから大きな事件となっていったわけですから、やはりその点は所管外のことをやった、権限がないことをやられたということで反省すべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
(大石教育長)何度も申し上げますけれども、調査をしてそれの結果、指導を行うというような権限はないものであろうというふうに考えますが、これは例えば教科書の使用であったり、授業の内容であったりというようなところから様々な情報の提供があって、そして付属小学校の子どもはもちろん付属の中学校1校もありますけれども、通常一般に中学校に行く子どももおる、また付属の中学校の子どもも高等学校に進学する場合には付属は高校はありませんので、一般の高校に来られるというような中で、様々な県の子どもたちが受けるべき授業を受けられない、あるいは教科書が使われないというようなことをもし耳にした場合に、これはですね。これはどういうことなのかという問い合わせのようなことはあって、しかるべきかな、というふうに思っております。
(山村議員)問い合わせのようなことがあって、しかるべきだということは私も分かりますけれども、わざわざ公文書を発行してこれに回答を求めるということでありますから明らかな、私はこれは行き過ぎた行為だというふうに言わねばならないというふうに思います。お認めにならないんですけれども、私はそういう問題であるというふうに思います。先ほど教育長が述べられました。教育の内容につきましてあれこれいろいろ推測されるということもあるかと思うんですけれども、現場でどのような教育がされていて、その教育がどういう子どもたちに影響を与えているのかという問題について、それを予測をもって、まるで間違えたことをやっているんじゃないか、というような形で調査をするというのは全くもって不当な介入だと言わればならないと思っておりますので、申し上げておきたいと思います。