『前衛』No.1049(日本共産党中央委員会発行)において、本田伊克先生(宮城教育大教授)が「奈良教育大附属小教育課程の『不適切事項』選定と根拠の不適切性」を、山本正夫先生(公立小教員)が「現場から見た奈良教育大附属小教員たちの指導と調査委員会報告書」を寄稿されています。
附小の先生方をはじめ、みなさまにお読みいただきたい内容ですので、要約して紹介させていただきます。
両論文とも、当会がホームページで公開した奈良教育大の教育課程調査委員会の報告書、大学の最終報告書をもとに、「不適切」と判断され、処分、出向人事が行われたことが、果たして「適切」であったのかを検証したものです。
◆本田伊克先生(宮城教育大教授)が「奈良教育大附属小教育課程の『不適切事項』選定と根拠の不適切性」
本田論文は、最終報告書で「不適切」と判断された個々の内容について、その根拠とされている学習指導要領の内容や教科書会社の示す時数配当などを詳細に検討した上で、「妥当性がなく」「理不尽」と結論づけられています。
そして、最終報告書が出されるまでの経緯で、「『不適切』であるとされる過程に、かなりの飛躍がみられる」と指摘しておられます。
特に、大学教員による調査委員会の基礎報告書(中間)段階では、おおむね大きな問題は指摘されていなかったのにも関わらず、学長による再調査指示後の調査と基礎報告書(最終)においては、学習指導要領上の教育内容の指導不足と指導年次、教科書会社の示す指導時数との齟齬までが言及され、調査が厳しいものになっていること、そして、大学による最終報告書は、その基礎報告(最終)と比べて大きくその内容が変更され、「不適切」事項が大幅に増やされていることを指摘されています。
その上で、結論として、以下のようにまとめておられます。
1,学習指導要領は「法規」ではなく、一字一句まで法規であるような扱いがされるならば、全国の学校の教育活動は不可能になる
2,附属小は、子どもの認識発達の段階を考慮して、子どもの発達に即した意義ある教育課程づくりの試みをしてきた
3,子どもたちの実態や現状、学校教育目標に基づき、教育内容や時数の扱いを決定し、改善していく教育課程編成の主体性を奪われている現状において、附小の問題と闘いは教育に携わる私たちすべての問題である
◆山本正夫先生(公立小教員)が「現場から見た奈良教育大附属小教員たちの指導と調査委員会報告書」
山本先生は、附小の先生方への「攻撃」は、もっともらしい理由がつけられているが、附小の教育実践を「気に入らない」様々な権力機構とその構成員たちが、あらゆる方面からつぶそうとしたように見えると述べておられます。
報告書を作成した大学教員たちの授業や学級経営の見方は、公立校での管理的立場の教員や指導立場の教員からの評価と重なるとし、附小の先生たちが受けた攻撃による苦しみは、公立校の先生たちと同じ苦しみだと指摘しています。
そこには、「子どもの教育学的発達」という視点が欠けており、授業場面での子どもたちの表面的な姿を「点」でしかとらえていない評価は、「言いがかり」のよる断罪であると批判しておられます。
そして、公立校で進む管理統制(大学当局が「ガバナンス」と表現しているもの)が行き届いた学校しか見ていない者は、教師のねがいや苦悩を理解できず、附小の実践に「言いがかり」をつけて教師たちを追い込み、追い詰めている。したがって、附小の先生たちへの闘いへの連帯は、公立校で苦しみ闘う先生たちを励ますものでもある、とまとめておられます。
ぜひお買い求めいただき、お読みください。